東京都自由が丘のクラフトサロンEarthia Wisteriaの店主です。
http://www.earthia-w.com
最近はかなり暖かくなってまいりました。
桜の開花ももうすぐとのことで待ち遠しいですね!
本日は大島紬の生地に有松絞りを施したコラボレーションによる試作ストールをそれぞれの工芸にフィーチャーしながらご紹介させていただきます。
ところで皆様は少し以前にこちらのコーナーにてご紹介させていただきました世界的に著名な有松絞りの「スズサン」を手掛ける工房による「手蜘蛛絞りヴェルヴェットショール」を覚えていらっしゃいますでしょうか?
http://earthia-w.seesaa.net/article/384979788.html
そちらの作品はEarthia Wisteriaのオリジナルというわけではございませんでしたがその際「スズサン」の日本を代表する有松絞り職人の一人「村瀬裕」氏よりせっかく何か制作するのであればEarthia Wisteriaならではのオリジナルコラボレーション作品を制作してみてはどうかとご提案を受けましたことがきっかけとなり今回ご紹介させていただきます試作品制作の運びとなりました。
「有松、鳴海絞り」という名前は皆様も一度くらいはお耳になされたことがあるのではないかと思いますがその歴史は深く宿場町として知られるこの地域では江戸時代初期にはすでに三河木綿などに絞り染めを施し手拭いや浴衣などを生産していたという記録が残っておりその後豊後の三浦絞りの技法なども伝わり飛躍的な発展を遂げ以来この地では400年の長きにわたり絞りの技と伝統を伝えています。
様々な生地を糸で括り防染を施してから染色する技法は我が国以外にも様々な国々で見られますがやはり手先の器用さと繊細な感性に裏付けられた日本の絞りは特筆に値するクオリティがございます。
「スズサン」は名古屋市緑区の有松アトリエだけでなくドイツのデュッセルドルフにも拠点を置きヨーロッパの著名な各メゾンなどにも絞りのファブリックを提供しており色々な分野の伝統工芸が衰退してきている我が国の現状の中で非常に活発な活動を続けており既にブランドとして世界的な名声を獲得している数少ない伝統産業の工房/会社の一つです。
今回のコラボレーション作品の生地となっております大島紬はEarthia Wisteria立ち上げの頃から作品を展示販売しておりつい昨今も「伊勢丹立川店」でのストール・ショール催事http://earthia-w.seesaa.net/article/380118883.htmlでは非常にご好評をいただきました「大島紬 秀円」の逸品が用いられております。
日本を代表する伝統工芸士の一人「重田茂和」氏により運営される「大島紬 秀円」は鹿児島県鹿児島市に工房を構えており平成10年に設立された比較的新しい工房ですがその伝統技法を継承するだけでなく新しい織りの考案、大島紬を使ったコラボレーション作品の制作、パリでの展覧会など高い技術をベースとした伝統と現代的な感性の融合を図り大島紬の可能性を拓くその精力的な創作活動は常に業界の注目を浴びています。
ウェブサイトも併せてご参照ください。
http://rencontre.jp/index.html
「大島紬」につきましても皆様一度はお耳になされたことがあるのではと思いますがその歴史もまた非常に深く18世紀初頭に鹿児島藩の指示により奄美大島では島役人以外の紬着用を禁じている文書が存在しているため確実にその大分以前から既に生産が行われていたと考えられています。
紬とは普通絹糸は繭の繊維を引き出して作られますが生糸を引き出せない品質の繭をつぶした真綿より糸を紡ぎだしたものを紬糸を用いて織られた織物です。
大島紬の場合は染色法も独特でティーチギと呼ばれる樹皮の煮出し汁により色を染め鉄分の多い泥土につけて大島特有の色を発色させます。
19世紀頃からは前もって染め分けた糸を経糸や緯糸に用いて織り上げることで文様を表す絣(かすり)の技法も取り入れられ良く知られる伝統的な大島紬独特の文様として発展を遂げました。
現在ではそのような伝統技法を守ることと併せて様々な織りや染色の技法も柔軟に取り入れ多種多様な織物を生産しています。
さて、それぞれの工芸のご紹介はこのくらいにさせていただき今回試作いたしましたストール作品をご覧くださいませ。
地になっております桜色のストールですがこちらは伝統的な大島紬とは少し異なり経糸に従来の大島紬のハリのある絹糸、横糸には柔らかくて節のある絹糸(スラブ糸)を用い淡い桜色のグラデーションを表現した現代大島紬と呼べる逸品で従来の大島と比べ非常に肌触りが柔らかい風合いが特徴です。
アップの写真です。
こちらの絞りは「手筋絞り」と呼ばれており生地を棒状に丸め込んで糸で細かくぐるぐる巻きに括ることで染料に触れない内側部分と触れる外側部分を作り出しその染色された部分が「筋」のように見えることからこのように名づけられた絞りの技法でこのようにアップにいたしますと糸の跡がよくご覧いただけますことと思います。
実際に首に巻いたところの写真もご覧くださいませ。
桜色の優しいグラデーションの地色に消し炭色の手筋絞りの縦縞がとても効果的なコントラストとなっており目にも非常に鮮やかなストールとなっております。
伝統工芸という枠に捉われる以前に普通に1つのファッションアイテムといたしまして素晴らしく望んでも他ではなかなか手に入らない逸品でございます。
色や素材的にもこれからの季節には重宝いたしますこと請け合いでございます。
まだこちらは試作ですが現段階でもクオリティーといたしましては申し分なく一人でも多くの皆様に我が国の誇る2つの伝統工芸によるコラボレーションを知っていただきたく今回から数回にわたり試作品をご紹介させていただきますので引き続きご注目くださいましたら幸いです。
展示販売可能な作品も近日中には完成いたしますのでご期待くださいませ!
店主
今回のコラボレーションだけでなくこれまでにも色々とお力をお借しくださり心よりうれしく思っております。
引き続きなにとぞよろしくお願い申し上げます。